2022-07-15

 

母の白髪染めを後ろ側だけ手伝った。一般的なカラー剤ではなくカラートリートメント、何日も重ねて塗っていくうちに少しずつ着色するというもの。美容師の手際をなんとなく思い浮かべながら手探りでブロッキングして塗っていった。薬剤をブラシですくう、髪をかき分ける、塗る。すくう、分ける、塗る……。単純作業をくりかえしている間おしゃべりを司る脳の部位が暇になるのが耐えられず、どうでもいい話をしたくなって自然に口が動いてしまう。別に話せばいいのだが。美容室で髪を切ってもらうときに美容師と世間話をするのがとても苦手で、黙って切ってくれる美容師を見つけるとそれだけで気に入って次からも指名してしまうくらいだったが、美容師も話さなければいけないと思って頑張って話題を引き出そうとしているとも限らない。髪を切っている時間が退屈で仕方なく、なにか話さずにはいられないのかもしれない。今まで一方的に苦手な人だと壁を作って申し訳なかった、と勝手に美容師に同情した。