2022-08-02

 友人が教えてくれた映画『ファーザー』(2020)を観た。認知症を発症した本人の視点を追体験する脚本がとても面白い。悲劇的すぎない展開も良かった。自分ひとりで何でもできる、自分は理性的な人間だというプライドがゆっくりと崩れていき、なし崩し的に介護を受け入れて傍から見れば穏やかになっていく様子が、私自身の祖父母の姿と重なり(認知症ではないが)、つらかった。もしもこの映画を観た後で、なお認知症患者や老人を"baby"扱いするような人がいるなら、あなたはいったい何を観ていたのか?と問いたい。画面のカラートーンに注目すると、当初ひとりで暮らしていたフラットは落ち着いた暖色のインテリアでまとめられていた(と思う)が、娘のフラットを経て最後に辿り着く場所ではすべてが淡い青色に置き換わってしまう。そうやって気づかないうちに生活の色相が少しずつ「ケア」の色へ移り変わっていくのが切ない。

 昼間は何をしても楽しいと感じないので寝ていた。しかし寝るのもべつに楽しくない。一週間ほど前からどうも鬱っぽく、タイミングによっては犬の吠える声を聞くだけでかなり堪える。休んだ方がいいんだろう。夕方になってやる気を取り戻し、先週メルカリで買った本を読んで過ごした。